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ニューギニア高地人

ニューギニア高地人  本多勝一 著 藤木高嶺 写真  朝日文庫 1981.10.20

 この本は日本で出版されたニューギニア本のなかで古典ですか。この本を読まずしてニューギニアを語るなかれと思ってしまいました。
 畑中幸子さんの『ニューギニアー~』も理解しやすかったですが、やはり研究の成果を著したような硬い面もありました。それに対してこの本は、朝日新聞の連載記事を本にまとめたもののためか、一般人にもわかりやすく、読みやすかったです。著者の文章力に敬服しました。
 また、本文に入る前に、ドラマの台本のように、本文に出てくる登場人物が写真入で紹介されています。これも話の理解に助かりました。

  この本で紹介されるニューギニア高地の人びとや自然の興味は尽きません。その一部は…。
・ニューギニア高地のジャングルではマラリアはないこと(気温が低くてマラリアを媒介するカがいない)。
・部族のことばが全く別なこと。そして本多氏ほか行動を共にしたカメラマンと京大大学院生は、短い滞在にもかかわらず、部族の言葉でなんとか会話する。
・容器を使わない食生活。土器もない。寝るときも体に掛けるものはなく、裸のままゴロリとなる。
・滞在した部落には、モニ族とダニ族という2つの部族が暮らしていたが、両者が協力して一つの地域社会をつくるようなことはないこと。
 両者は社会形態も違い、モニ族は家族単位、ダニ族は団体生活。そして社会形態が個人の性格に影響を及ぼすこと。
・村の部族に付いて4000メートル級の山脈の向こうの山脈を横断する.
本多氏たちを先導するアヤニ族たちは、猛スピードでジャングルを駆け、急斜面も走るように上る。その力強さを本多氏は「いもぢから」と表現。
 密林を分け入って山超えする様子は、有吉佐和子さんの『女二人のニューギニア』の冒頭の密林行を彷彿させた。
・著者たちが始めて部落の人の家に泊まりにいったとき、ノミに悩まされる。それで思い出すのは、「世界ウルルン滞在記」。〇〇族の村で衣食住を共にした若手タレントの男の子たちは偉かったと思う。

 著者がインドネシア側ニューギニア高地の未開の部落に1ヶ月余り滞在したのは1964年のことで、その頃の日本は、ニューギニアについて、“「ニューギニア」と言えば、すぐに「ヒト食い人種」とこだまが返る。”という認識だったようです。50年近く経った現在はどうでしょう。著者が滞在した部落の人々の暮らしもどうなったでしょう。部落を囲む原生林はまだあるでしょうか。彼らの誇りは今もゆるぎないでしょうか。

 この本は、三部構成からなる『極限の民族』の第二部です。第一部・カナダ・エスキモー、第三部・アラビア遊牧民、どちらに関心ありますか。
 この朝日文庫版も、講談社文庫版も絶版になっているのが残念です。
by ruksak | 2010-10-12 12:48 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)


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