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ぼくらの出航

ぼくらの出航  那須田 稔 著/市川 禎男 さし絵  木鶏社 1993.9.3(1962年講談社初版の復刊)
終戦の混乱のハルビン。悪事の見張り役をさせるチャン親方から逃げ出したタダシを救ったのは、同じ親のない子どもたち、タヌキ(日本)、チン(中国)、サイ・アヒル(朝鮮)だった。廃船の船底を秘密のすみかとし、冒険ずきな五人は力をあわせて、数々の事件をくぐりぬけ、たくましく成長する。少年たちの冒険と国をこえた友情を熱くユーモラスにえがく。 (Amazonより)

 このあらすじはおもに物語の後半部分で、日本の「トム・ソーヤーの冒険」に例えられています。
 物語は終戦の直前から始まり、終戦の日まではハルピンでののどかな暮らしが描かれています。戦前のハルピンでは日本人、中国人(満州人)、ロシア人、朝鮮人が同じ町に暮らしていました。共存とはいえないかもしれないけれど…。
 北方領土が日本に返還されたときもロシア人とともに平和に暮らせるでしょうか。

 敗戦後、お父さんがシベリアに連れて行かれたあと、タダシ君は体の弱いお母さんをリヤカーに寝かせて日本人収容所に向かいます。タダシ君はときどき振り返ってお母さんの様子を見ながらリヤカーを引きます。しかし、お母さんは途中リヤカーの上で息を引き取ります。タダシ君は中国大陸でひとりぼっちになってしまいました。その後、身寄りのない仲間たちと出会って後半のストーリーへと向かいます。

 目の前で(実際には背中のほうで)お母さんが亡くなっても、タダシ君は生きる気力を失いません。タダシ君の仲間たちもそうです。
 著者は初版のあとがきで次のように書いています。

アジアでも、ヨーロッパでも、少年少女たちは、かれらのやりかたで、闇から光のあるところへ、戦争から平和に向かって、体あたりで生きぬきました。この体あたりの行動だけが、少年少女たちのゆたかな成長をはばもうとする現実という怪物にたちむかう、ただひとつの方法であったわけです。(p275より)

 図書館でこの本を取り寄せたとき、新品のようにきれいな本が届きました。多くの少年少女たちに読んでもらいたい一冊です。

 児童書なので行間が広くてすぐ読み終えることができました。子どもの頃に読んだ本でよく目にしたようなタッチの「さし絵」が懐かしかったです。 
by ruksak | 2013-05-21 18:37 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)


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