カテゴリ:旅の本( 139 )

北極圏一万二千キロ

北極圏一万二千キロ   植村直己 著   文藝春秋  1976.9.1

 先月読んだ『植村直己 妻への手紙』(文春新書)の手紙の多くが、この犬橇旅の間に出されたものだったので、旅の記録の方も読んでみました。
 この本を読むと、こちらが北極圏犬橇旅の公式記録で、手紙のほうは舞台裏的記録のように感じられました。両方読んで別々の視点で一つの旅を辿ることができました。
 独りで、マイナス30度や40度を超える厳冬期に、犬橇を繰って、移動する困難は想像に難くありません。橇が海に落ちたり、氷原のただ中で犬たちに逃げられたり、犬たちの食糧不足に陥ったりと、危機一髪の状況に何度も遭遇します。困難な状況の克服なしに、「偉業」は達成しません。

 犬橇旅なので、この本では犬のことと、立ち寄る村々で出会うエスキモーのことが多く書かれています。
 エスキモーにとって犬はペットではなく家畜で、橇をひかせるときは容赦なく鞭を振るいます。それは植村氏も同様です。状況が厳しくなれば「犬を殺して食う」とまで考えることもありました。
 しかし、犬たちが植村氏に馴れるにしたがって、植村氏は犬たちのことを自分が養う家族のように思えてきました。こんなに頑張ってくれた、橇をひいてくれた・・・。 
 エスキモーの人たちには犬橇で長旅をしてもこのような感情はやはり生まれないでしょうか。

 アメリカやカナダのエスキモーたちにはスノースクーターが生活の足になってました。当時犬橇をまだ利用していたというグリーンランドでは現在どうなっているでしょう。 

 今わが北海道も雪と氷の季節です。
 植村氏が犬橇を滑らせていたときのように、気温の上下によって、雪が滑りやすくなったり、昼間融けた雪が朝晩凍って靴底にガリガリと音が響きます。
 気温が5度まで上がった先日は、雪融けが進んで道路に水たまりができました。植村氏はこれよりもっと水で覆われた氷原を走ったのだと犬橇旅のことを思い起こしました。

 *北極圏1万2000キロ  ヤマケイ文庫版の紹介ページをリンクしました

  2/25追記: 第一次南極越冬隊隊長・西堀栄三郎氏の序文も必読です。
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by ruksak | 2015-02-19 14:33 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

まだふみもみず

まだふみもみず    檀 ふみ 著    幻冬舎 2000.6.10  /幻冬舎文庫 2003.7.31

 いろいろなところに発表した短いエッセイが一冊の本にまとめられてます。
 役柄とは別の 檀ふみ という人物の人となりがわかります。ざっくばらんで、気取りがなくて。

 海外旅行がテーマの文章の中に、

 人には「郷に入っては郷に従え」のタイプと、どこに行っても「おらが流」をまかり「通す」タイプの二種類あるとは思っていたが、・・・

 という文がありました。
 自分はどうかと振り返るに、日本食はなくてもいいから、「郷に入っては郷に従え」のタイプのような気がするけれど、手で食べるよりスプーンかなにかあったほがいいし、洋式水洗トイレが好ましいし・・。
 無理せず、「郷に入っては郷に従え」ばいいことにしましょう。 

※1/29追記
 恋にまつわるエッセーも収録されているけれど、文庫の解説を書かれた瀬戸内寂聴先生によれば、‘失恋の話などあるけれど、こんなものは恋ではない’ ですと。先生!素晴らしい。
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by ruksak | 2015-01-24 15:58 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

植村直己 妻への手紙

植村直己 妻への手紙   植村直己 著   文春新書  2002/10/21

 本書の大部分は「北極圏一万二千キロ」の犬橇旅の遠征先からの手紙になっています。 
 読み始めて最初に感じたのは、「こっ恥ずかしい」でした。
 婚約時代に、そして新婚のときに愛する女性に宛てた手紙だから、そう思われて当然かもしれません。

 植村氏の冒険は他の著作や映像で知ることができますが、奥さんへの手紙からつい本音が出てしまう魂の叫びのようなものを感じました。
 手紙って訴えかけてくるものがあるんです、・・第三者が読んでも。どうしてなんだろう。

 北極圏の犬橇旅でも手紙を出したり受け取ったりできました。
 だいたい「何月何日頃どこそこの村・町にいるから(着くから) ここに送って」と郵便局・警察署や知り合いの住所を知らせて手紙を受け取ってました。電話が使えるところに行ったら電話で会話もできました。 
 電話なら同時に気持ちを伝えることができます。手紙は一方的に伝えるだけになってしまいます。もっと電話が使えたら、あるいは現代のように瞬時にやり取りできる通信機器があったらと思われたでしょうか。

 他の人の旅先からの便りを読んで自分の手紙を思いました。
 あんな文面でも便りがないよりはいい、かどうか・・・。 
  (旅先から送った我が手紙は カテゴリ>外国便り にあります)
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by ruksak | 2015-01-10 13:14 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

紅茶のある風景

紅茶のある風景 -暮らしてみたイギリス紅茶の世界
土屋 守 著   阿部 真由美 絵    曜曜社出版  1996/6/5

 タイトルに私の好きな、 イギリス と 紅茶 があったら、開かにゃいけないでしょう、ってことで読んでみました。
 イギリス滞在経験に基づいた紅茶のトピックと、パステル調の多数のイラストが、憧れの英国暮らしを演出しています。

 格式のあるホテルで ‘アーリー・モーニング・ティー’のサービスを受けたエピソードが書かれています。寝室にお盆に載せたティーセットが運ばれて、ベッドの中で朝一番の紅茶がいただけます。
 アーリー・モーニング・ティーは、奥さんのために旦那さんが淹れる役目だったそうで、年配の方のなかには現在でもこの習慣を続けているご夫婦があるようです。

 私も、 アーリー・モーニング・ティーを、以前いただいたことを思い出しました。
 アフリカ・カリバ湖ツアーのあとで、ツアーで一緒だった女性のオックスフォードのお宅を訪ねました。夜寝る前に、朝紅茶を飲むかと聞かれて、yesと答えたら、モーニングティーをお盆に載せて持ってきてくれたんです。
 西洋風な、お姫様気分がしました。

(カリバ湖ツアーは、タグ・'91アフリカ で 少し書いてます) 


* 庭@千草 ・・イラストレーターの阿部真由美さんのブログです。絵柄がイギリス本の挿絵にピッタリ合ってます。
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by ruksak | 2014-12-08 16:30 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

ベトナムぶらり旅


ベトナムぶらり旅 イラストで描く庶民の生活  小坂 國男 著   花伝社 2014/5/20

 ホーチミンからハノイまでの一か月の旅を、イラストとイラストに添えられた文章でたどります。
 1ページに二枚ずつ、絵日記を読むよう。
 口絵7ページに本文のイラストのいくつかがカラーで掲載されてます。全部カラーで見たいところですが、しかたないです。
 
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by ruksak | 2014-11-19 13:56 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

カスバの男

カスバの男 モロッコ旅日記   大竹伸郎 著   集英社文庫   2004.7.25

 11日間のモロッコの旅を文章のほかに旅行時のスケッチとその後に制作した銅版画で記しています。(写真も)

 この本を読むまで大竹伸郎という芸術家を知りませんでした。偶然にも先日NHKの「日曜美術館」でお姿を拝見しました。現在もバリバリ活動されてます。

 この本で描かれたモロッコの情景はもちろん大竹氏の目を通して表されたもので、悲しいことに芸術家の方の文章は頭に入っていきませんでした。絵や版画のほうが著者がモロッコで感じた心情が伝わりました。解説を書かれた角田光代さんは、読み終えててすぐにモロッコ行きの航空券を買いに走ったそうで、角田さんは著者の感性を十分吸収されております。

 そんな私に確実に伝わったことは、観光客目当てに言い寄ってくる人が多いこと! です。
 例えばマラケシュでは、
人、人、人の大広場を歩くと、タンジール港に着いたときのガイドの執拗さの、10倍ぐらいの圧力で金を目的に言いよってくる。金だ。金がすべてだ。ここではなにはともあれ金がすべてなのだ。カメラ持つ手に思わず力が入る僕は、ここではヨソモノのカモでしかない。(p119より)

 心して行くようにってことですね。
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by ruksak | 2014-10-14 23:34 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

イスタンブールの目

イスタンブールの目   新藤悦子 文・写真  主婦の友社  1994.4.1

 トルコやイスラム圏に詳しい著者のイスタンブールの思いを記したフォトエッセイです。
 主な内容は、
・イスタンブールの暮らし
・わたしの好きなトルコ料理
・トルコで買いたい素敵な雑貨
・気の向くままにイスタンブール散策
・イスタンブール発アナトリアでこんな旅
 (本の帯より)

 料理のページは写真の代わりにイラストでレシピを紹介しています。
 どのテーマも、いつか行くトルコ旅行の参考にと、ガイドブックのようにも読んでしまいました。

 去年読んだ『羊飼いの口笛が聴こえる』に書かれた内容とつながるエピソードもあります。
 
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by ruksak | 2014-09-22 16:09 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

笛吹きインドひとり旅

笛吹きインドひとり旅   うえの善巳 著  中央アート出版社 2005.7.10

 著者のインド愛を感じる本です。
 インド礼賛ではないんですよ。 ‘これでいいのかインド(人)’みないな記述もあります。
 が、著者にはインドが合ってるんですね~。・・・と思ったところで、私に合った国は? 以前だったら、迷わずイギリスと答えたけれど・・。


 この本でも特に印象に残る箇所があり・・、

その1.ドイツでは下宿の大家が日本人を嫌がる ~部屋で魚を焼くから
“ボクたちが学生のころのハナシ”ということなので、著者の年齢と出版年から逆算して、30年くらい前?
 大家さんから日本人が嫌がれた話は初めて聞きました。

その2.トイレの話題のページに著者の20才のレッスン生との会話が挿入されており、
“「便座ってふつう、すわりませんよねぇ」
 彼女たち潔癖症世代の女の子たちは、それがフツーだという。”
 ―皆さんもそうですか?
 便座に座らない人が私の知り合いにもいたことをすっかり忘れてました。マレー半島の旅でクアラルンプールで友人に会ったとき、私の友人も便座に座らないと話してました

その3.蚊よけには天井から下がったファンが効く
 スーパーの惣菜コーナーなどで小さな扇風機が回っていることがあります。虫よけなんだなーと思いました。
 それよりも前、スリランカのコロンボの宿で宿のおじさんがファンが虫よけになると言った言葉を疑いました。おじさん、すみません、知りませんでした。
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by ruksak | 2014-08-16 13:53 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

イギリスの小さな教会

イギリスの小さな教会   大澤 麻衣 著   書肆侃侃房  2012.12.14

“イギリスのどの教会を訪ねても、必ず何か一つは語りかけてくるくるものがあります。 (略)  ・・これからも巡礼旅は続きます”  (おわりに より)

 巡礼旅のなかで見つけた、小さな教会の、そのなかから、50箇所が本に収められています。
 美しい写真や素敵なイラストとともに、行き方まで書かれていて。・・行きたくなってまうやろー。(もうこんな言い方する人いないか・・)

 行き方が書かれているといっても、「小さな教会」はだいたい村か集落から外れたところにあります。最寄り駅でさえガイドブックで見たことがないような地名です。(ロンドンの教会が一か所だけ紹介されてます)
 それから、巻末資料としてイギリス歴史年表や教会の建築様式・用語の説明のほかに、石材の説明まであり、教会への関心の深さがわかります。これから教会を訪ねるときに参考になります。

 リンクした出版社のホームページで4ページ分立ち読みできます。また、著者のホームページがリンクされています。
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by ruksak | 2014-08-01 15:32 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)

ブワナ・トシの歌

ブワナ・トシの歌  片寄  俊英 著
朝日新聞社 1963.11.10/現代教養文庫 1976.10.30

 東アフリカのタンガニーカ湖畔に京都大学の調査隊が類人猿の研究基地を設営することになった。
 本書は、現地のアフリカ人とともにその基地設営に当たった俊旦那(ブワナ・トシ)の奮闘の記録であるとともに、からだごとアフリカとアフリカ人にぶつかっていった、ひとりの青年の心の記録でもある。(現代教養文庫 カバー見返しより)

 時は1961年、著者は24歳、京大の建築科の大学院生でした。
 場所はタンザニア。当時はタンガニーカといい、基地建築中にイギリスからの独立に立ち会います。(タンガニーカは1964年にザンジバルと合体してタンザニア連合共和国となります)

 以前読んだ、今回の隊員の一人である伊谷純一郎氏の『ゴリラとピグミーの森』(岩波新書)から現在のチンパンジーの研究の地・マハレ山塊へ繋ぐ、京大のチンパンジー研究の歴史のようなものがわかって興味深かったです。
 他にも興味深かったのが、今から60年ぐらい前のアフリカや日本のことや、著者のアフリカ人とのかかわり方とか・・、アフリカ人を色眼鏡で見てないところに好感が持てました。

 文庫版のあとがきに8年後に建築作業に雇った人たちの村を再訪したときのことが書かれています。
 それと、写真やイラストがオリジナルより多く収録されています。

興味深かったことを更に取り留めもなく・・
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by ruksak | 2014-07-19 16:42 | 旅の本 | Trackback | Comments(0)


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