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積みすぎた箱舟

積みすぎた箱舟 ジェラルド・ダレル著 浦松 佐美太郎訳  暮しの手帖社 1960.4.20

 前回ご紹介した『風とけものと友人たち』の著者、ジェラルド・ダレル氏の最初の著作です。
 作品の内容説明は、講談社文庫版の裏表紙の紹介文に頼ります。恥ずかしながら…。
西アフリカのカメルーンに小動物の採集旅行に出かけたイギリスの動物学者ダレルが、その体験を明るくユーモラスにつづる異色のドキュメント。著者の動物に寄せるこまやかな愛情、原住民の生活・習俗に及ぶみごとな洞察、密林の美しさをうたいあげる自然描写の的確さが話題を呼び、世界のロング・セラー。表題は大洪水から脱出するノアの箱舟に因む。
 カメルーン行きは、1947年、22歳のときでした。当時カメルーンは、仏領(大きい)、英領(小さい)と分かれていて、ダレル氏が出かけたのは英領の方です。本が出版されたのは、6年後の28歳のときです。
 コルフ島シリーズで島の小さな生き物を捕まえていた少年ジェリーが、この本では、現地の人間を雇って大掛かりに動物を捕まえます。村人たちに「珍しい動物を捕ってきたら買い取るぞ」といって、生き物を集めていきます。あのジェリーが大人になったなあと思いました。

 作品中の会話に、「動物採集とはどんな仕事か一般の人には想像もつかないだろう」というセリフがあります。
 狙った獲物を追い詰めて見事捕獲し、網に捕らえられたあとも暴れて抵抗する動物たちの様子を読むと、動物採集は残忍な作業に思えました。でもこれが住宅地に現れたイノシシや猿だったら、残忍と感じるかどうか。
 また捕獲した生き物は、檻や適当な住み家をつくってそれぞれの生き物に合った食事を毎日与えなければいけません。飼育する生き物が増えていくと、生き物を捕りに行く時間が取れなくなるということがわかりました。
 動物採集は密林やその先にぽっかりある草原で行われます。密林の行軍の場面で、有吉佐和子さんの『女二人のニューギニア』が思い出されました。ニューギニアの密林に通じるところがあります。密林は暗くて蒸し暑いばかりでありません。
 原住民がスイスイ歩ける(町に住む者とっては)道なき道をつまずきながら付いて行く様は、ダレル氏とて同じです。(2010/1/30に『女二人のニューギニア』の記事があります)


 新訳が福音館文庫から出版されています。
 ホームページの説明文を読むと、コルフ島シリーズを読んだときも思いましたが、原書で読んでみたくなりました。単語を追ってくだけで終わりそうだけど。
by ruksak | 2010-09-23 14:42 | 旅の本 | Trackback | Comments(2)
Commented at 2010-10-02 00:34
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ruksak at 2010-10-02 12:11
鍵コメさん
こちらのほうこそです!
出かけるのを急がせてしまい、すまんこってした。
楽しい思い出を持ち帰っていただけたら最高です。
心の休暇は必要だよネ。


いつも心に旅があります


by ruksak

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